替え玉の王女と天界の王子は密やかに恋をする
「ロバート様の部隊のデニスを呼んでほしいのですが…」

高齢の番人は、お城の門番にそう言った。
この人は一体何をするつもりなんだろう?
デニスって誰?
掴まれてた腕は離してもらえたけど、なんだかとっても落ち着かない。



「残念だが、ロバート様の部隊はまだ戻っていない。」

しばらくして戻って来た門番がそう告げた。



「そうですか…それでは……」

番人が戻ろうとした時…



「お待ちなさい!」

女性の声が聞こえた。
数人の侍女を引き連れ、お城の中から出て来た女性は、真っすぐに私の方へ歩いて来た。
まるで刺すような鋭い視線が怖くて、私は俯いた。



「そなた…!」

「は、はい。」

顔を上げたら、その人はやっぱり私のことをみつめてた。
そして、私の両腕を取り、腕輪をじっとみつめ、目を大きく見開いた。



「一緒に来なさい。」

それが私に向けられた言葉なのは、間違いない。



「では、俺も!」

女性は、マリウスさんを一瞥しただけで、良いともだめだとも言わなかった。
私とマリウスさんは、女性の後を着いて行った。
一体どこに連れて行かれるんだろう?
でも、なぜ?
この腕輪が何か?



次々と疑問は浮かぶけれど、その答えはわからない。
逃げ出したいけど、こうなったら逃げられるはずもない。
不安に押しつぶされそうになりながら、私はただただ、女性の後を着いて行った。


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