替え玉の王女と天界の王子は密やかに恋をする
それにしても、ここ最近の出来事はなんだか夢のようだ。
送り迎えが面倒だからと、私は、ここのところ、城に泊めてもらっている。
一介の…しかも、その中でも貧しい部類の庶民である私が城に住んでいるなんて、普通ならあり得ない話だ。



「フェルナン様、お茶をお持ちしました。」

ノックの音、そしてしゃがれた声…
それが誰なのかは、すぐにわかった。



「あ、はい、どうぞ…」

部屋に入って来たのは、侍女を伴ったヒルダだった。
彼女は、なぜだかわからないが、どうも私に関心があるようだ。
私がこの城に泊まるようになってから、彼女はいろいろと口実を設けては私に接触して来た。



お茶の用意をさせると、ヒルダは侍女を下がらせた。



「今日も良いお天気ですね。」

「……そうですね。」



もしかしたら、ヒルダは私が貴族だということを疑っているのかもしれない。
先日は子供時代の話を訊ねられた。
もちろん、本当のことは話せないから、嘘八百を並べ上げた。



ルーサーが調べさせているような節はない。
ヒルダ自身の好奇心のように感じる。



「フェルナン様はあちこちを旅されてらっしゃるようですが、ジャミナへは行かれたことがありますか?」



(ジャミナ…!?)



「ええ…とはいえ、こちらに来る時に通ったというだけですが…」

「そう…ですか……」

ジャミナの国名を言われた時、もしかしたら私は動揺してしまっただろうか?
ヒルダの表情が一瞬固くなったように感じたが…
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