替え玉の王女と天界の王子は密やかに恋をする
「今から発つんじゃ、どこまで行けるかわからないが、この町にいるのも危険だと思う。
だから、とにかく急ごう。」



あんなに賑やかだった商店街は、大半の店が片付けられていて、とても静かになっていた。
人の数もだいぶ少ない。
もうこの町に追っ手はいないとは思いつつも、でも、まだ怖くてあたりをきょろきょろしてしまう。



私達は、来た時には通らなかった道を進み、そこに続く細い道を南に向かって歩いて行った。
あたりはいつの間にか暗くなっていた。
フェルナンさんはランプに火を灯した。



「どこか、泊まれる村でもあれば良いんだが…」

「……そうですね。」



そういえば、お昼以来、何も食べてない。
でも、あんなことがあったからか、お腹もすかない。
体力的にも相当疲れてるはずだけど、疲れ過ぎたのか、神経が高ぶってるからなのか、なんだかよくわからない。



「あ…フェルナンさん…ここって、なんて国なんですか?」

不意に頭に浮かんだ質問を、フェルナンさんに訊ねた。



「何?そんなことも忘れたのか?」

「は、はい。」

「ここは、ジュミナだ。気候も穏やかだし、資源も豊富でとても暮らしやすい国だ。」

「ジュミナ……」

もちろん、それは聞き覚えのない国名だ。
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