替え玉の王女と天界の王子は密やかに恋をする




「サキ、どうかしたのか?
最近、元気がないようだが…」

次の日、フェルナンさんが私に声をかけてくれた。
ここに来てからお互いに忙しくて、せいぜい食事の時に話すだけだった。
それもほんの二言三言…
今日は、フェルナンさんが珍しく家にいた。



「いえ、そんなことないですよ。
あ、もしかしたらちょっと疲れが出てるのかも…」

「無理はするな。
出来ないことは出来ないと言えば良いからな。」

「はい、ありがとうございます。」

やっぱりフェルナンさんは優しいな。
いつも私のことを気にかけてくれて…



「ここにいるものあと数日だ。
本当に無理するなよ。」

フェルナンさんが、私の肩を優しく叩いた。
そうか、ここに来てもうそんなに日が経ってたんだ。



「あの、フェルナンさん…
もしも、マリウスさんが探してるガザン王の剣の在りかを教えてもらったとして…
それから、どうするおつもりですか?」

「そうだな。
私達は特に行くあてはない。
マリウスに着いて行っても良いし、別れても良い。
でも、それはマリウスの意見も聞いてからだな。」

「そ、そうですね。」



そう言えば、ここに来てすっかり忘れてたけど、私達、追われてたんだよね。
最初は、フェルナンさんを追う奴ら、そして、その次はガザンの悪党たちに…
ここに置いてもらえたことは、そういう点でも幸運だったのかもしれない。


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