大天使に聖なる口づけを
いつもなら、じゅうぶんに常識を踏まえているはずのアウレディオの思いがけない行動に、エミリアは不安になる。
「どうしちゃったのよ、ディオ?」

アウレディオの上着の裾を小さく引くエミリアの様子に、フェルナンド王子はすっと目を細めた。

「残念だが、彼女がいなければ意味がないんだ。もちろん君のその判断力と、中庭の群衆の中であっという間に彼女を攫った行動力も惜しいけどね……」
そうしてもう一度エミリアの手首を掴んだ。

まるでそれに対抗するかのように、庇うようにエミリアの肩に手を掛けたアウレディオ。

このままでは険悪になってしまいそうな雰囲気を感じ、エミリアはたまらず、
「わかりました! はい! 私やります!」
と声高らかに宣言した。

「エミリア」
咎めるように珍しく名前を呼んだアウレディオの声にドキリとしながらも、

(だってこのままじゃ……ディオが王子の意に反した犯罪者扱いになっちゃう……それに今のところ、ミカエルを捜す手がかりは他にはないんでしょ?)

エミリアは、視線にぐっと力をこめて、いつもアウレディオがそうしているように、目だけで語りかける。

アウレディオはふうっと大きなため息を吐いた。
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