大天使に聖なる口づけを
次の日も、その次の日もアルフレッドはエミリアを迎えに来た。

並んで歩く二人を、『いやーお熱いねー』などと冷やかす男の子たちは、あっという間にアルフレッドに捕まって、二度とそんなことは言えないほどに仕返しされた。

大きな犬が来たら必ず手を繋いでくれるし、急スピードの馬車からは体を張って庇ってくれる。
アルフレッドはひょっとしたら、エミリアを守ってくれているのかもしれない。

『ありがとう』
勇気を出して小さな声でお礼を言ってみても、アルフレッドは何も答えないので、エミリアは聞こえていないのかと思った。
けれど真っ直ぐ前を向いたままの横顔をそっと見上げてみたら、頬を真っ赤に染めていたので、エミリアまでなんだか赤くなってしまった。

『ほら、あの子だよ。お母さんがいなくなっちゃったんだってさ』
ヒソヒソ声の噂話が偶然耳に飛びこんできて、エミリアは一瞬ギクリとする。
懸命に前に踏み出そうとしていた小さな足が、もうピクリとも動かなくなってしまって途方にくれる。
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