大天使に聖なる口づけを
「エミリアの好きな人なんてどう考えたってアウレディオに決まってるのに、当の本人たちが見当違いな方向ばかり捜すから、私がアルフレッドに頼んだのよ」

あまりの出来事に、エミリアは開いた口が塞がらなかった。
アウレディオにしがみついていた手を慌てて放す。

「ほらね。下手に身近なものだから、意地を張っちゃってなかなか素直に好意を示せないでしょ? こういう場合は荒療治が効くのよ……」

「フィオナ……! アル……!」

エミリアの手が次第に震えてきた。
もちろん最大級の怒りによってである。

察しのいいフィオナはエミリアの周囲にぐるりと視線を巡らし、即座に彼女に背を向ける。
「……それじゃ、私はこれで」

「じ、じゃあ俺も……」
アルフレッドもそそくさと部屋を出て行く。

「ちょっと待ってよ!」
二人を追いかけようとしたエミリアは、うしろからふわっとアウレディオに抱きすくめられた。

「もういいよ。いいだろ? ……エミリア」
ため息混じりではあったが、いつになく優しい声で名前を呼ばれて、思わず泣きそうになった。

(ああ、私はやっぱりディオが好きだ……)
改めて自覚して、このあとに待つ事態を想像して、だからこそここは素直に、認めたくはなかった。
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