大天使に聖なる口づけを
しかしそれほどのことをしても、『今日のアウレディオ様』を一目見たい女の子の数が、いっこうに減らないばかりか増えるいっぽうなのが、エミリアには信じられない現実である。

そのアウレディオが、いつになくエミリアの仕事場までやってきた。

それ自体でもかなりの驚きだったが、エミリアにもっと大きな衝撃を与えたのは、いつもとはあまりにも違いすぎる、アウレディオの様子だった。

きつく真一文字に結ばれていることの多い唇が、わずかにだが口角を上げて、微笑みのようなものを作っている。
庭いじりを仕事としているため、ほとんど一日中外にいるわりには色白の頬は、走ってきたからなのかほんのりと赤く染まって艶っぽい。
淡い金髪の前髪の下で、見え隠れしている大きな蒼い瞳は、隠しきれない喜びにキラキラと輝いていた。

『どんな時でも眉ひとつ動かさない』と形容されることの多いアウレディオの変貌ぶりに、エミリアは思わずドキリとした。

聖堂の前からアウレディオを追いかけてきた女の子の一群も、思いがけず一番間近で対峙することになったマチルダとミゼットも、つられて思わず部屋にやってきたアマンダ夫人も、みんな固唾を飲んでアウレディオの次の行動を見守っている。

窓の近くにエミリアの姿を見つけたアウレディオは、真っ直ぐに歩み寄ってきた。

妙な迫力と気迫のこもった力強い歩みに、エミリアは思わず逃げ腰になる。

気持ちは懸命に逃げようとしているのだが、アウレディオの深く澄んだ蒼い瞳に魂を絡めとられてしまったかのように、体のほうはエミリアのいうことをきかない。
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