大天使に聖なる口づけを

「王子にお前の存在を気づいて貰えとは言ったがな……なにもあんな危険な状況になった時に、人込みかきわけて前に出ろとは言ってないんだよ!」

烈火の如く怒り狂うというわけではないが、静かに怒りの炎を燃やして、アウレディオはいつまでもエミリアに対して怒っていた。

「ごめんなさい……」
ここはひたすらに謝るしかないとふんだエミリアは、素直に頭を下げ続けた。

城の外周。
いつもの休憩の木陰に座って、広げられた弁当をつまんでいるのは、今のところフィオナだけだ。

「でもいつの間にあんな所に移動してたの? 全然気がつかなかったわ」
フィオナの指摘に、エミリアはぎくっと首が縮み上がるような気がした。

「そ、それは……気がついたらあそこに居たって言うか……なんて言うか……」
しどろもどろに弁解してみても、エミリアの周りの空間をじっと見つめているフィオナにも、心の奥底まで見通してしまうような真っ直ぐな視線を向けてくるアウレディオにも、とうてい通じる気はしなかった。

「なんだか……時間が止まったみたいになっちゃって……他の人はみんな動かなくなって……それでなぜか王子と私だけ動けたんだけど……」
だからといって真実を告げても、とても聞き入れてもらえるような内容でもない。

「は?」
「何ですって?」

揃って冷たい対応を返されて、エミリアはそれ以上言い募る気力をなくした。

「ごめん。なんでもない……」
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