あの夏に見たあの町で


「一緒に遊んでいい?」


と聞くと、飛び切りの笑顔で「うん!」と頷いてくれた




「俺は白石朔(しらいしはじめ)、よろしくね」


俺が自己紹介をすると「あーちゃんは高山ありすです!」とお姫様みたいに着ていた洋服の裾を少し持ち上げてお辞儀をした



「あ...あじゅめ...」


はじめが発音しにくいのかなかなか言えないあーちゃんに「さくでいいよ」と言うと、すぐに「さくちゃん!」と呼び始めた




「ねぇ、さくちゃん!あの大きな木登れる?」



とあーちゃんが指を差したのは公園の端の大きな木



近付いて見てみると、大きいけれど、足をかける所も多くあって登りやすそうだった




いつも新と遊んでいる公園でも、よく木登りもしていたから、あーちゃんに教えながら登った




木の上であーちゃんとたくさん話した




時々あーちゃんから出てくる知らない言葉に首を傾げることもあった




それがフランス語だったと気付くのはまた先の話




散々喋って、「帰ろっか」と言うと、あーちゃんは怖くて動けなくなった




ガキんちょながらに小さな使命感に燃えた




あーちゃんを抱いて木を下りる







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