あの夏に見たあの町で

〜雨上がりに見えるもの 朔side〜



雨も完全に止み、“さて、帰るか”と車に向けて歩き出すとありすに呼び止められ振り返る




“さすがにこんなびしょ濡れでお車に乗るのは躊躇われるのですが...”



苦笑するありすの言葉に頷く




カッコよく気にするなと言いたいところだが、昨日乗り始めたばかりの新車はさすがに気になる...






“服を乾かしに寄って行きません?”




ありすは公園の目の前にある実家を指差して首を傾げた




濡れたまま帰って風邪を引くのもな...





“借りてもいい?”と彼女と同じ様に首を傾げると“もちろんです”と笑顔をくれた彼女にドクンと俺の心臓は高鳴る







坂を下りて正面の玄関からありすが鍵を開けてドアを開ける




“エマ?早かったわね、今日は遅くなるんじゃ...”



家の中からありすのお母さんが出てきて、俺達を見て固まった




“あら大変、ちょっと待っててね”とまた奥に入っていった



ありすがフランス語で話す方が自然な理由がわかった



実家での会話はフランス語なのだ





パタパタと戻ってきたありすのお母さんはタオルを1枚ずつ俺とありすに渡し、俺に目を向ける






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