あの夏に見たあの町で



結局、夕食を食べながら“もちろん飲むわよね?”とニッコリと笑うお母さんに頷く他なく、お酒も飲まされて帰れなくなり、客間に布団を敷いてもらい一晩を明かした




朝食までご馳走になった




家を出る時に、ありすが“じゃあ、また来月帰るね”と言ってドアを開けた




来月は新の命日




“一晩ありがとございました”と俺も礼を言って、ドアを抜けようとすると



“朔くん!”と呼び止められ、振り返るとお母さんが神妙な面持ちをしていた




“先日、用があって病院に行った時に、たまたま貴方のお母様にお会いしたの。余命二ヶ月って言ってらしたわ。...会いには行けない?”




以前の俺なら、バチが当たったんだろって鼻で笑ってただろう




昨日、ありすのお母さんから俺が捨てられた真相を聞いて、今は心が揺らぐ






とは言え、今の俺には絶縁状態の母親に会いにいく勇気はまだない






“考えておきます”と無理やり笑顔を作り、ドアを潜り閉めた





もう少しだけ頭の中と気持ちを整理する時間が欲しい







青く晴れ渡る空の下に足を踏み出す









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