君と特別な日を過ごす方法 ~長谷川誠の苦悩~

「もう自分の仕事終わってるよな?声をかけて上がってくれてよかったのに……」

申し訳なさそうに言った俺の言葉に、莉乃は肩をすくめると、

「何度かチラリとドアを開けては、お声をかけたんですよ。でも集中しているようだったのでお邪魔はしたくなくて」
ああ……。そうか……。またいつものように俺は自分の世界に入ってしまったのか……。

ニコリと笑った莉乃の顔に救われたような気持になったが、俺はもう一度頭を下げた。

「全然いいですよ。本当に用事があれば今みたいに呼べばよかったんですし。それよりこの今こぼれたコーヒーの量を見ると、15時にいれてからこのコーヒーにも手を付けてなかったんじゃないですか?」

ぐっしょりと濡れた台拭き1枚では足りずに、ティシュでまだ机を拭いている莉乃の言葉に、せっかく入れてくれたコーヒーに手もつけていなかった事実に申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
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