イジワル専務の極上な愛し方
「そうなんですか……」

口調から、それに対してどこかうんざりしているようにも見える。すると、まるでその疑問に答えるかのように、彼は続けた。

「専務という肩書は、こっちが思う以上にキラキラ輝いているみたいでね」

「それって……、肩書き目当てということですか……?」

口するのもためらうけれど、専務は頷いた。

「ああ。俺に取り入ろうって、裏が見え見えなんだよな。うんざりするよ。それから、兄目当てで、言い寄られたこともある」

「そんな……。それは、ひどいですね」

だから、女性に対して、どこか本気になれないところがあるのかな……。いつも、”二回目”がなさそうだものね……。

「まあ、慣れてるから、別に傷つくってことはないんだけど。ただ、本気で恋愛ができなくなってるとは思う」

サバサバと言う専務は、言葉こそ気にしていないように見せているけれど、やっぱりどこかもどかしそう。

本当は、”本気の恋愛”がしたいんじゃないのかな……。

「それなら……、最初から女性のお誘いをお断りしたらいいんじゃないですか?」

中途半端に受け入れるから、相手も誤解をするってこともあるかもしれないし。そう思い言った言葉だったけれど、専務は一瞬目を丸くしたかと思うと、アハハと笑った。

「そうだよな。田辺さんの言うとおり。最初から、相手にしなきゃいいのか」

「そうですよ。無理に、自然消滅を狙わなくてもよくなりますよ?」

「本当だな。これからかは、そうしよう」

そう言いながら、専務は再びメニュー表に目を落とした。もしかして、専務ってどこか天然なところがあるの……?

女性関係に派手な人だと思っていたけれど、そういう人じゃないとか……?

私の話を素直に聞いてくれたことが嬉しくて、思わずクスクスと笑っていた。

「なに?」

訝しげに見る専務に、私は笑いを抑えながら答えた。

「すみません。ただ、専務って実は天然な方なのかなって。私、もっと計算で女性と接しているのだと思っていました」
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