イジワル専務の極上な愛し方
『今夜は彩奈のマンションへ、着替えを取りに行こうな』

部屋を出る間際、翔太さんは私にそう言った。”一緒に暮らそう”と言われたことは、冗談ではなかったみたい。

彼の車で会社に向かいながら、おずおずと尋ねてみた。

「翔太さん、本気なんですか? その……、一緒に暮らすって」

すると、彼はちらっと私に視線を向ける。涼しげな視線は、聞かなくても答えが分かるようだった。

「当たり前だろう? 俺は、彩奈と本気で付き合うつもりだから。お前がイヤだって言うなら、もちろん無理強いするつもりはないけど」

「そんな……。イヤだなんて、全然思っていません。でも、本当にいいんですか……?」

とんとん拍子に事が進んている気がして、少し怖くも感じる。幸せに思うことが、こんなに続いていいのかな。

「俺がそうしたいから。彩奈を独り占めしたくて、たまらない」

「翔太さん……」

どう返していいか分からないほどに、翔太さんの気持ちをストレートにぶつけられる。でもそれは、素直に嬉しくて胸をときめかせるものだった。

◇ ◇ ◇

《真中専務とのお約束を、本日にお願いしたいのですが、よろしいでしょうか?》

会社に着き業務を始めると、早々にそんな電話がかかってきた。声の主は祐一さん。名乗られたときは、心臓が止まるかと思ったくらいに緊張したけれど、向こうは私だと気づいていないみたい。

「確認をいたしまして、すぐに折り返しをいたします」

学生の頃と変わっていない彼の声は、懐かしさも感じる。だけど、嬉しいと思う気持ちは一ミリもなくて、むしろ気分は重くなっていた。

翔太さんに電話の内容を伝えると、午後一番で祐一さんが来社することになり、さらに緊張感が増してくる……。
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