生真面目先生のちょっと大人の恋の話
今までニコニコしていたその人は私を支えながら、急に怖い顔になった。

「ちゃんと俺の言う事を聞いて下さい。」

私は仕方なくその人に頭を下げた。

「では…、申し訳ないですが、家まで送って頂けますか?」

私がおどおどと顔を上げると、その人は嬉しそうに微笑んだ。

「じゃあ、車を回してきますので待っていて下さい。」

「えっ?電車で帰るのではないのですか?」

私は意外な展開に、更に驚いた。

「この近くに世話になっている知り合いの家があるんです。そこに車を置かせてもらっています。すぐに取ってきますので、ちょっと待っていてください。」

その人はまだ言い終わらないうちに走り出していた。

私はその後ろ姿を呆然と見た。

どうしよう…、このまま帰ってしまおうか…。

私はふっとそう思って、ゆっくりと歩き出した。

ふくらはぎを冷やしてもらった事が良かったのか、思ったより歩けそうだ。

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