冬至りなば君遠からじ
幽霊の告白
 その日は一日、校内では先輩の姿を見かけることはなかった。

 明日からはいよいよ期末試験だ。

 全然勉強していないのにな。

 昇降口まで一緒に来て凛に聞かれた。

「ねえ、今日高志がうちに来て勉強するって言うんだけど、朋樹はどうする?」

「遠慮しておくよ」

「遠慮って何よ」

 もちろん高志のことだけど、言わない方がいいだろう。

 きっと「あたし達の間には何もないよ、バーカ」ぐらい言われる。

「いや、ちゃんと勉強しないとやばいからさ。うちでやるよ」

「なんて言って、一人で先輩に会いに行くんでしょ」

「いるかどうか分からないじゃん。今日、学校で会ってないし」

「そうなんだよね。あたしも気になってるんだけどさ。そもそも三年何組なんだろうね」

「スマホで聞いてみれば」

「既読はつくけど返信はないんだよね」

 後ろから高志が来た。

「よ、お待たせ」

「じゃあ、高志と楽しんでよ」

 僕は二人に軽く手を振った。

「ハア? 楽しむって何言ってんのよ」と凛が怒り出す。

 僕はどうも間違ったことを言ったらしい。

「べつに何もしないし。高志と勉強すんだよ。バーカ」

 結局言われたよ。

 殴られるかと思ったら、凛が高志の背中に鞄を振り回す。

 高志はよけずに背中を丸めて受け止める。

 高志ごめんな。

 でも、うれしそうか。

「分かってるよ。頑張ってよ、勉強」

「なんだ、朋樹は来ないのかよ。三人って言ってただろ」

 凛が高志の腕を引っ張る。あれ、そもそも高志の方から誘ったって言ってなかったっけ?

「いいの、高志。こいつ、あたしら二人の関係に嫉妬してるから来ないんだってさ」

「おい、なんだよ、嫉妬って」

 凛に引っ張られながら高志が僕に片手をあげた。

「じゃあな、朋樹」

「うん、また明日」

 僕は心の中でがんばれよと声をかけた。

 凛はどんどん扱いが難しくなっていく。

 高志も災難だな。

 赤点取らないといいけど。

< 19 / 114 >

この作品をシェア

pagetop