冬至りなば君遠からじ
葛藤
 土日はずっと寝ていた。

 眠くはなかったけど、起きているのがつらくて、ずっとベッドで横になっていた。

 気持ちが沈んでいるせいか体も冷たくなったような気がしていた。

 海流に流されて南極に漂着してしまった爬虫類の物真似みたいだった。

 月曜日はコミュニケーション英語と保健の試験だけど、もうどうでもよかった。

 僕は間違ったのだろうか。

 あの時僕は凛にキスをしておくべきだったのだろうか。

 無理だよ。

 僕にはそんな行動力なんてないだろ。

 できるわけがないよ、そんなこと。

 別にいい人だからじゃない。

 僕は良いことも悪いこともできない、自分の欲望に素直に従うこともできないダメ人間なんだ。

 考えれば考えるほどできないような気がした。

 全然想像ができない。

 こわい。

 女の子がこわい。

 絶対無理だよ。

 できないって。

 そんなことができるんだったら、ちゃんと告白してとっくに僕は凛とつきあっていただろう。

 僕は僕自身の気持ちに素直に向き合ったことなんかないんだ。

 だからずっと本当の気持ちを隠してごまかし続けてきたんだ。

 もう手遅れなんだ。

 僕は凛のことが好きだった。

 凛のために我慢したんだ。

 損した気分だった。

 まだそんな後悔をしていた。

 何度も同じ考えが浮かんでは消えて、気持ちが波のように揺らめいていた。

 違うことを考えようと思ってスマホで先輩に連絡を入れてみたけど、返信はなかった。

 学校が休みだと僕らがいないから先輩も存在できないのだろうか。

 考えれば考えるほど不思議な存在だった。

 僕は本当に好きだと言われたんだろうか。

 幽霊だから何も覚えていないと言われればそれもまた仕方のないことになるんだろう。

 でも、もし本当にそんなふうに言われたらショックだろうな。

 それこそ凛とつきあっておけばよかったんだ。

 またそんな考えに戻るところが、人間としてダメなんだな。

 何回も同じ思考に戻って同じところをグルグル回っているだけだ。

 糸原から出られない僕の人生と同じだ。

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