冬至りなば君遠からじ
尾行ごっこ
 放課後、三人で昇降口を出た。

 期末試験前で部活中止期間に入って、全校一斉下校なのだ。

 今週末の木金と、来週の月火を耐え抜けば、楽しい年末年始を迎えられる。

「あんたらさ、一緒に勉強しない?」

 僕はとくに予定はなかったので、凛の誘いにうなずいたけど、高志はあっさり断った。

「悪いな、田口たちとガストで勉強するって約束しちまった」

 高志の指さす校門の外に野郎どもがたむろしている。

「あっそ、じゃあ、朋樹、ウチ来てよ」

 凛の家は線路沿いのマンションだ。

 角が丸くておいしそうな厚切り食パンを積み重ねたような形をしているので、食パンマンションと呼ばれている。

 このあたりではかなり遠くからでも目立つ建物だ。

「おう、じゃあな」

 あっさり他の連中と行ってしまいそうになる高志に凛が声をかけた。

「あんたさ、女子の部屋にうちら男女二人きりになるっていうのに、気にならないの?」

「だって朋樹だぜ。それにさ、女子の部屋って、おまえの部屋ならライオンの檻みたいなもんだろ。朋樹の安全の方が心配だよ。喰われねえようにしろよ」

「うっせ、バーカ。ガストで田口とパフェでも食ってろ」

 高志のおかげで凛の機嫌が悪いまま僕たちは学校を出た。

 凛は何もしゃべらない。

 なんで僕がこんな気まずい空気に耐えなくちゃならないんだよ。

 中学のころからか、こんなことが何回も起こるようになった。

 そのたびに何とか機嫌を直してもらおうと僕が話しかけても、かえって不機嫌になるばかりなので、最近はあきらめるようになってしまった。

 学校の横の大きなため池の脇を通って住宅街の細い路地に入る。

 対向車が来てクラクションを短く鳴らして通り過ぎていく。

 後ろの方から何回もビッビッと聞こえてくる。

 振り向いて凛がため息をつく。

「道が狭いんだからしょうがないじゃんね」

 糸原高校の生徒の下校時刻はいつもこんな感じだ。

 横に並んで歩いている僕らも悪いんだろう。

「うちら糸高生のことバカにしてるんじゃない?」

 まあ、自慢できる偏差値じゃないことは確かだ。

 それに、凛はその中でもさらに赤点持ちなのだ。

 僕はいちおう平均くらいだけど。

 言うと機嫌が悪くなるから黙っていよう。

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