春を待つ君に、優しい嘘を贈る。
ふたりの視線が向けられる。

私は弾かれたように頷いた。だって、断る理由がないもの。

維月さんのこと、姉とのこと、あの人のこと。全てを思い出したいから。


「なら、よかった。それじゃあ、週末に」


その前に、りとに言わなきゃならないことがたくさんある。

心配してくれたのに酷いことを言ってごめんね、と謝らなくちゃ。

維月さんが会いに来てくれたことも、諏訪くんが全部話してくれたことも。

いつからさっきの会話を聞いていたのか分からないし、いつ時間を作るか、色々と問題は山積みだ。


(………維月さん)


あなたは今、どこで何をしていますか?


月が見えない夜空にそう問いかけた私を、りとが優しく見つめていたことに気づくことはなかった。

そんなりとを、紫さんが切なげな表情で見ていたことにも、気づかなかった。

誰も。
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