春を待つ君に、優しい嘘を贈る。
私の肩を掴んでいる力が強まった瞬間、鼓膜を破りそうな音が響き渡った。

それはどこかで聞いたことがある音だったけれど、こうして現実で耳にしたのは初めてのことだ。

何度記憶を巡らせても、たった今響いた音は銃声だとしか思えない。


「ひっ…!?!?」


目の前で、赤が舞った。

何が起きたのか理解しようとしたけれど、出来なかった。いや、したくなかった。

悲鳴に近い声を上げた姉が、赤く染まった肩を押さえながら、腰を抜かしたように膝から崩れ落ちたのだ。


(何、が…)


姉が、肩を撃たれた。

そう理解した時、何者かが背後からやって来ていることに気がついた。


「――皆さん、お揃いで」


その、声は。

知っている。

憶えている。

忘れるはずがない。


「(な、んで……)」


どうして。

どうして、ここに。

その存在を確かめるように、私はゆっくりと後ろを振り向いた。

滲んだ視界に映ったのは、艶やかな黒髪と波打つように揺れているきれいな琥珀色。

ああ、やっぱり。

目が合った瞬間、全身の血が噴き出るんじゃないかってくらいに、心臓が激しく動き始めた。
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