春を待つ君に、優しい嘘を贈る。
総長の声を合図に、五、六人ほどの男が入ってきた。

彼らは皆竜のオブジェのようなものがついた腕輪をしている。

目を凝らしてみれば、総長の腕にも紗羅さんの腕にも嵌っていた。

恐らく、神苑のメンバーである証なのだろう。


思わずふっと笑みがこぼれた。

それを見た総長が怪訝そうな顔をしていたけれど、私は気にしない。


これから何をされるのかと思うと、怖くて怖くて堪らないけれど。

複数の男に囲まれているこの状況を、“ああ、またか”と思っている自分が居た。


何故だろう。

こんなこと、今まで一度もなかったのに。

なかったはずなのに。


「―――やれ」


総長はそう言うと、紗羅さんを連れてもう一つの出口から出て行った。

その一声で、私を囲んでいた男たちが一斉に距離を詰めてきた。

私の両腕を押さえる人。

私の両足を押さえる人。

私の口にタオルを突っ込む人。

そして、カチャカチャとベルトを外している人。


「(っ……!)」


やめて。お願いだから、それだけはやめて。

あの人が刻み込んでくれたものを、消さないで―――
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