異世界トランスファ
天井を見上げて何か考えていたギンが真剣な顔で見つめてきた。

「あの・・よ」


「・・ん?」


ドキン


その目はまるで仕事中のギンみたいだ。

真面目なキリっとした目。

思わず心臓が大きく脈打った。


「お前はこれからどうしたいんだ?」

「え?・・・そんなの・・」


決まってる。


「お前の気持ちを優先したくて・・俺は」

「あ、ありがと・・私は・・」




ドキン





「ギンと、生きて行く」

「・・・」

「この時代で生きる。帰れなくてもいい」

「・・・」


ギンは黙ったままだ。

でもこれが私の今の本心。


「後悔しねえか?」

「しないよ」

「親と二度と逢えない、友達にもな」

「うん。・・でも今はギンと、皆と一緒にいたい。・・・この子を産みたいよ」


「・・・・・わかった」


そう一言だけ言って、ギンは私の顔を胸に抱き寄せた。


< 843 / 850 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop