異世界トランスファ
私は今、背中に乗っている。ギンの背中に。


「ヒオリ、大丈夫かー?」


「うん・・」


落ち込んだ様子の私を、センリやナギも心配してくれているようだ。


数時間前___




「この東の国では、女性は思春期を迎えると王のもとへ遣わされる。役目の為だ」


「うん」


「最新の医療技術により、女性はまず検査をする。今後子供を産む事が出来るかどうかを」


「え・・そうなんだ・・」


「そこで、無いと判断された女性は追い返される。勝手に連れて行かれ勝手に捨てられるんだ」


「え!?捨てる!?」


「言い方が悪いが事実だ」


センリの悔しそうな顔、ギンの怒りの顔が目に焼き付いて離れない。


「女として認められなかったとな。・・一見解放に見えるだろうが」


ごくり。

と生唾を飲む私。


「圧倒的に男が多い国で、しかも子供が産めないと分かれば結婚も簡単には出来まい」


「あ・・」


「そして最も許しがたいのはそれをいい事に、その女を店で使うという事」


いつの間にか私の体は小刻みに震えていた。



「もちろん、それを自分から認めて自分から働いてる女もいるんだぜ?」


ギンの発言はすぐにセンリに取り消される。


「だが、最近はヨコシマな奴が女性が戻ってくるタイミングで攫うって事件も増えている。
知らない場所で無理やり働かされているという事件が多発しているらしい」


「怖い・・」



私の手をセンリは握って、なだめようとしてくれた。


「ごめんなこんな話、でもこの世界を俺は変えたい。・・と思ってる」


「え?」


凄い目標だ。

私はセンリの手の温かさを感じた。グッと一瞬力が入ったのだ。



「と言っても、一介の考古学者に出来る事は限られてるんだけどな」


「センリ・・」


「俺は・・歴史書で読んだ、ヒオリのいた時代の頃の様な国に変えたいんだ」


真っ直ぐに見つめられた。

その綺麗な瞳に。
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