日常なままの境
彼の日常
その時には、すでに俺の意思は固まっていて、
すぐにでも出発できる状態だった。

ここも今日で最後かと思ってベランダに出たら、
ふと、煙草の匂いがして隣りを覗きこんだら、
女がぼけーっとふかしていた。

正直、可愛いわけでも、綺麗なわけでもなく、
服装や髪型は干物女そのもので、体型も少しぽっちゃり。
全然、タイプではなかったけど、こんな俺でも感傷的になってたのか、
声をかけてしまった。

「星空見てたら、いつもと変わらないように見えるよねー」

「そうですねー」

そんなたわいもない一言なのに、なぜか耳に残って、
少しだけ時間をかけて、慎重に距離を縮めた。

これまでのように、現地調達でも何の問題もなかったけど、
そんな日々に飽きてもいたし、
気を遣わなくていい、会話のテンポも悪くない、体の相性は抜群、
となれば連れて行かない選択肢はなかった。
でも、この時はそれ以上もなくそれ以下でもなかった。
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