3月生まれの恋人
『もう、死にたい・・』
ご丁寧に畳まれた自分の服に着替え、ふらふらとリビングの扉を開けると
ぷーんと、香ばしい香りが鼻をついた
パンの焼けるにおい、淹れたてのコーヒー
キッチンでジュージューと何かの焼ける音
あたしが立てた扉の音に気づいた男は、ゆっくりと振り返り
『腹減っただろ?』
と笑った。
確かに、こんな状況でもお腹は減るんだと驚く
思えば昨日の朝以来、何も口にしていないことに気づき、意に反してお腹が鳴った
『ほら、とりあえずこれ』
飲み物らしきものの入ったコップを強引に握らされ、あたしは中に入った液体をじっと見つめた
『りんご。』
『え?』
『急に食べると胃が驚くだろ?』
そう言われて、改めてグラスの中を覗いてみる、
すり下ろしたらしきりんごを何かで割ったような感じの?
『いいからとりあえず飲め』
背を向けたままそう言う彼に
おそるおそる一口・・・あたしはそれを口に含んだ。
ごくりと音を立てて、喉の奥へと流し込む。
あれ?
『美味しい!』
さっぱりとしていて、でも甘い
残りのそれをごくごくと一気に飲み干すと、彼はあたしに向き直ってにっこりと笑った
『それが飲めるなら飯も食えるだろ』
並べられた二枚の皿に、出来立ての目玉焼きが乗せられて
彼の手によってテーブルへと運ばれた
『座って』
二人掛けのダイニングテーブル
彼は向かい側の椅子を指差してあたしに座るようにと促す