諦めたけど好きです
片思いの途中
髪を伸ばし始めた。
体型を気にし始めた。
人の目を気にするようになった。
小学生の時と違うことが増えてきた。
私は中学生になった。
そうは言っても、人数が少ないからクラスのメンバーは変わらずほぼ小学生の延長だ。
私が変わり始めた頃……


「ちょっと待ってよー那奈ぁー!」
「やーだね!」
私は授業でバスケをやっていた。
女子で一番背が高い私はボールとるのは…
まぁ、ちょちょいのちょいだ。
『ダムダム…シュッ!』
「イェーイ!」
三点シュート決まりっ!
………じゃないんだよなぁ~
バスケとかになると、夢中になってボール取ってドリブルして、三点シュートって…女の子がさぁーやるか?
私の体は、背は高いし水泳やってたから肩幅男子よりも広いし、足太いし。
もぅ、女の子じゃないのよ。小学生でそれはまだいいけど好きな人の前では、それはいただけませんよね。
そんな事を思っていると、
「スッゲーなお前!」
肩を叩かれた。秀だった。
「な、何が?」
「だって三点シュートなんて決める女子あんまいねーもん。良くできるなぁー」
(これは…誉めてくれてるのかな?)
「まぁね。」
「でもなんか、お前見てるとゴリラみたいだったけどな。」
ニコッと秀は笑った。
『プチッ』
「はぁぁぁぁぁぁぁ!?💢誰がゴリラだ!」
そう、この時の私のあだ名はゴリラ。しかも、このあだ名をつけたのが秀だ。
もぅ泣きたくなってくる。




こんな感じて、私は女の子扱いされない女子。
全部自分のせいだけど、やっぱり好きな人には女の子扱いされたいから、色々頑張ったんだよ。
でもね、頑張ったけどね仇になっちゃった。
中2の終わりの頃にね…




「なぁー。お前って好きなやついんの?」
私の隣の席の男子が聞いてきた。
「一応………いるけど…」
「!!教えて~俺の好きな人も教えるから!」
「やだっ!」
別にその人が信頼出来ないわけではないが、秀のことが好きだなんて、そんな恥ずかしいこと言えるわけがない!
でも、結局2週間ぐらいずっと同じ質問をされてこっちが折れてしまった。
「!!マジかよ!秀のことが好きなの!?」
(声でけー!)
「アホ!大声で言うな!」
視線が集まる。
「……………………あれ?」
みーんな目を丸くしてる。
「………マジか!那奈って秀のことが好きだったの!?」
(あぁ~!!聞こえてたー!!!!)
「あ、い、いや。えっと……」
私はパニック状態だ。
(ど、どうしよう…あ)
私は目の橋でとらえた。
みんなが大声でしゃべって、私に質問してニヤニヤしてる。
何の話をしているか、すぐにわかるだろう。

秀が、すぐそこにいた。

男子が秀の肩を叩く。
「おい!聞いてたか!こいつ、お前のこと……」
(やめてよ!!)
泣きそうになってた。
秀の顔見たくない。声も聞きたくない。もう、何もしたくない。
「わかってるよ。こんなに近いんじゃ、全部聞こえてるよ。」
思ったより、秀の声は冷たい。
「……次移動教室だろ。早くいくぞ。」
私と目が合った。すぐにそらされた。
(………あぁ。)
何も言われなくても理解できた。
それから、秀は話すどころか目も合わせてくれない。
なんとなくだけど、避けられてる感じはした。
でも、心の中ではバカみたいに「まだ、大丈夫かな?」
って思ってた自分がいた。
本当にバカだよ。自分は。
あんなに、秀に冷たい目を向けられたのにまだ期待してるなんて。

授業中。
仲の良い友達が、コソッと話しかけてきた。
「ねぇねぇ。さっね、秀に那奈のことどう思ってるか聞いてきたんだ!ねぇ、ききたい?」
「………………」
正直、マジギレ寸前だった。
友達は、ドラマのネタバレみたいにしゃべってる。
ここ何日もクラスのみんなにずっとからかわれてた。
「たぶん~那奈と秀が付き合う確率は~10%ぐらいかな?
あははっ!我ながら妥当~」
これは、昨日友達から聞いた会話。
別に自信がある訳じゃない。相手が私のことを好きじゃないのはほぼ、いや100%わかってる。

………でもさ、好きなんだよ。それを確率で表して笑って。楽しそうに。
本当、この時キレてない自分に努力賞を送りたいよ。

「それでねー。秀が言ったんだけど~」
自分はまだ、秀の気持ちを聞きたいと言ったわけでもないのに勝手に話始めた。
「タイプじゃないんだって。……可哀想…那奈」
(…………はぁ?自分から言っといて、可哀想だ?)
泣きそうだった。
凄いムカついていたけど、全部ほんとの事だ。
「………そっか!」
私は友達に笑顔でそう言った。

帰って、私は布団に顔を埋めた。
「……………………うぅ…」
告白していないのにフラれた。
友達にはバカにされ、惨めに思いやられた。
秀は私を避ける。
(もう、何もかもイヤだ。やめて。考えたくない。イヤ!イヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだ)
頭の中で、秀との思い出がよみがえってくる。
「………ふぅっふっ………わぁーーーー!!」
大声て泣いた。
「うぅ、イヤだよ………イヤだ……諦めるなんて………」
出来るわけがない。突然秀の気持ちを知って、準備も出来てないのに何もかも失って。
まだ、好きでいたかった。片思いも辛いけど。辛いだけじゃなかったから。
今日はいっぱい秀と話せたとか、誉めてくれたとか、席替えで隣になったとか。
嬉しいこともあった。
それが…今全部終わった。
そして、今までの嬉しいことも全部………嘘。
自分だけが思ってたこと。
「……………喜ばせるだけ喜ばせといて………最後はタイプじゃないって…………」
涙が溢れて止まらない。
「…まだあんたに、告白すらしてないの!!こんな形で秀の気持ちを知りたかった訳じゃない!ちゃんと……ちゃんと…………………終わらせたかった………ちゃんとした形で終わりたかった、私が秀に言って、秀の口から聞いてちゃんと諦めがつくように…………したかった」
でも、全部自分のせいだ。誰のせいでもない。
秀に好かれなかった自分のせい。
だから余計に、寂しかった。
寂しくて寂しくて、誰かに助けてほしかった。
どうしたら、良いのかと。
答えを聞きたかった。
自分の事なのに、他人に答えをねだるなんてきっとバチが当たるかもね。
でも、私は秀を諦めること以外。自分で答えを見つけれなかった。












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