突然ですが、オオカミ御曹司と政略結婚いたします
「……籠の中の鳥が欲しいなら、私はそうならないから」

「なんだと?」

 ――その目がどこか悲しげに揺れているように見えるのはなぜなんだろう。

「私はあなたのペットじゃない。形は婚約者だけど、お互いに利害のために成立してる関係でしょ? あなたやグループに迷惑はかけない。でも、愛のないこの場所に閉じ込めないで!」

 乱れた呼吸を整えながら、まっすぐに見据える。彼の長いまつ毛が、白い肌に影を作った。

「……勝手にしろ」

 吐き捨てた彼は、部屋から出ていってしまう。バタン、と勢い良くドアが閉まる音に、反射的に肩を跳ねさせた。

 閉じ込めようとしたり、勝手にしろって言ったり、なんなのよ。

 思い返せば思い返すほど、心の一角に炎が燃え上がる。黒々としたわだかまりが、視界すら少し暗くするような気がした。

 それからしばらく。創は家に帰ってきても、私と顔を合わせることはなかった。
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