夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】

伝えたくても伝えられない想いを封じように俯くと、視線の先に毛糸の玉が転がってくる。
そして、その直後にはそれに戯れるリディアが。


「みゃ~!」

「あ、駄目よ?リディア」

私は涙を拭くと、駆けてきたリディアを抱き締めて毛糸の玉から離す。

深い緑色の毛糸の玉。
前に、バロンが好きだって言ってた色。


いつも窓から見る外で警備をしているバロンは寒そうで……。
そう思ったら、私はついつい編み物を始めてた。

渡せる訳ないのに。
渡しても迷惑をかけるだけなのに……。

そう思いながらも、プレゼントは完成間近だった。
机の上には完成したマフラーと、編みかけの手袋。

クリスマスまで、あと一週間。

……
…………。
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