夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】

(5)


「幸せになりなさい」

アルバート様は……。
お祖父様はそう言って、帰って行った。
帰り際に私の手を握って、微笑ってくれた。

私は嬉しくて。
幸せ過ぎて、また泣いてしまった。


「アカリ、泣き過ぎだから……。
そんなんじゃ明日の結婚式酷い顔になるぞ?」

ソファーで隣同士に座っているヴァロンは、私が作った焼き菓子を口に咥えながら服の袖で涙を拭ってくれる。


この二週間。
ヴァロンは私の為にどれだけ頑張ってくれたんだろう?
お祖父様に何度も結婚の許可をもらいに行ってくれて、私の元婚約者にもきっと何度も会いに行って交渉してくれたんだ。

私がいなくなった事で、みんなが困らないように……。
私が安心して、暮らせるように……。
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