夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】
「ローザ殿は違います。
仕事だからでも、お金の為でもない。
あの方は本当にここの事をよく考えている。
……。お嬢様の事も、ですよ?」
「!……私の、事も?」
私の問い掛けに、真っ直ぐな瞳で見つめながら頷いて答えてくれるバロン。
そんな彼は普段自分をからかう時とは違う真剣な表情だったが、信じられない。
いくら彼の言葉でも、この時の私は素直に受け止める事が出来なかった。
ーーーでも。
バロンの言葉は嘘じゃない。
私はこの後に起こる事件で、それを身に染みる程に知る事になる。
「……あ、一つ訂正致します」
「?……なに?」
「お嬢様の1番の信頼を得るのは、私であってほしいですね」
「!……ふふっ、バロンったら」
こんな風に笑えていたから。
こんな風に穏やかだったから。
私には、お嬢様としての自覚が足りなかった。
アルバート様の孫娘。
アルバート様の後継者で在る事が、自分にとってどれだけ大きなものか……。
私は、分かってなかったのだ。