俺様社長はカタブツ秘書を手懐けたい
不破さんがそこまで言った直後、突然私の視界が反転した。再びベッドに倒され、天井をバックに、獲物を捉えた狼みたいな彼が私を覗き込む。


「もう一回、遠慮なくいただくとするよ」

「え! ちょ、不破さ……っ」

「名前で呼んでくれないのか? 昨日はあんなに色っぽく何度も呼んでたのに」


彼の胸を押し返そうとしたものの、耳元に唇を寄せて意地悪く囁かれ、快感と羞恥が襲ってきて力が抜ける。

私ってこんなにМ気質だっけ、と頭の片隅で思いつつ、「……雪成さん」と従順に呼んだ。

これだけで嬉しそうな笑みを見せられたら、抵抗する気もなくなってしまう。

チョロイい女だと自負しながら、朝からこれは胃もたれするんじゃ、と思うくらいの甘いキスと愛撫を受け入れた。

 *

今年のクリスマスは、思いがけず好きな人と過ごせた最高の一日になった。

ベッドにいる時間が長かった気もするけれど、街中をぶらぶらしたりケーキを食べたりと、普通のデートもできて本当に幸せだった。

夢のような連休を終え、忙しい月曜日が始まる。気を引きしめて出社した私は、雪成さんと顔を合わせても動揺するまいと誓い、いつも通り秘書業務に打ち込む。
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