俺様社長はカタブツ秘書を手懐けたい
パーフェクト・マネジメントのオフィスは、十六階のワンフロアを貸し切っているらしい。

そこに向かうまでの間、二十人ほどが乗っているエレベーターの中で、専務は声を潜めて話しだす。


「あなたが秘書を引き受けてくださって、本当にありがたいです。これまで私がやっていたことを任せられるので。社長のお世話は大変ですが、頑張ってくださいね」


純粋に応援してくれているのだろうけれど、不破社長に対しての嫌味みたいなものが心なしか含まれているような気がして、私は苦笑を浮かべる。

社長とバーで飲んだあと、私たちを車で送ってくれたのはこの桐原専務だった。

そのとき、彼は『私を足に使わないでくださいよ』と不満げにぼやいていたし、車中での会話を聞いていても、社長に対しては歯に衣を着せぬ物言いをするのだ。

それは信頼し合っているからこそなのかもしれないが、社長に手を焼いていることには違わないんじゃないかと思う。現に、世話係はすぐに辞めたくなったらしいし。


「……三日で嫌になるほど大変なんですか?」

「あぁ、聞きましたか」


クスッと笑いをこぼした専務は、階数の表示に目線を上げ、ひとつ頷く。

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