俺様社長はカタブツ秘書を手懐けたい
「お待たせ。行くぞ」


私を見下ろし、ひと声かけて微笑む彼にもドキリとしてしまう。

これからデートですかね?と錯覚しそうになる頭を軽く振り、急いでバッグを持って、社長室を颯爽とあとにする彼に続いた。


社長が暮らすマンションは本社から徒歩十分だと聞き、まずその近さに驚いた。

たどり着いた十二階建てのそこは、グレーのシックな外観で、オフィス街の中にひっそりと佇む隠れ家のよう。

エントランスの中に入れば、都会の喧騒を忘れるくらいの落ち着きがあり、内装もとてもオシャレなデザイナーズマンションだということがわかった。


「綺麗なマンションですね……!」

「とりあえず会社から近いとこにしたくて、去年引っ越してきた。まだ段ボールに入れっぱなしのものがあるから、それを片づけてもらいたいんだ。あと、掃除も」


社長はオートロックを解除してエレベーターホールへと進みながら、ようやく今日の目的を教えてくれた。

確かにオフィスではできないことだけれど、なんとなくもっと重要なことかと予想していたから、肩透かしを食らった気分。

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