私の好きな警察官(ひと)!

蓮見side


***


「おーい?何ボーッとしてんの、珍しく」


「あ?……別に」



高橋に声をかけられて、ふと時計に目をやればもう22時を少し過ぎたところだった。



「そう?何か考え事してるみたいに見えたからさ」


高橋は俺の同期で、頭が良くキレる。
どちらかと言えばインテリ系の地味メガネだけど、根っからのお人好しが影響して意外にも女には人気のあるタイプ。


人の気持ちに敏感で、常に気配りを忘れない。
警察官として、時に冷血さにかけることもあるが、それが高橋のいいところで、人として出来たやつだなって尊敬する部分も多い。




「考え事……ねぇ」



今日は朝から商店街でひったくり事件発生で現場に駆けつけたり、パトロール中に迷子の老人を3人も拾ったり、ほとんど休憩も返上して業務にあたっていたせいもあり、ここに来て俺を軽い睡魔が襲い始めていた。



今日に限って夜は静かで、電話一つ鳴らない交番。



何もねぇに越したことはねぇけど、そのせいか無駄に頭の中を過ぎるのは、さっき交番前で繰り広げられたアイツと頭悪そうな男の会話。



「何?悩みごとでもあるなら聞くけど」



『たまには俺にも弱いとこ見せてよ』と、にこやかに微笑む高橋が女に人気なのも納得かもしれねぇな。ま、実際はこんな男なんか本当に稀だ。

甘い言葉を何の躊躇いもなく吐ける男なんてそうそういるわけねぇ。


女は夢見がち、完全にドラマの見すぎ。



「別に悩んでねぇよ」


「……なーんだ、ついに赤羽ちゃんのことで悩み始めたのかな〜って思ったのに」



そう残念そうに眉を下げて、俺の隣の椅子を引いて静かに座った高橋に心臓がザワついた。って、これじゃまるで俺が本当にアイツのことで悩んでたみてーじゃねぇか。
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