にせもの王子さま

モッサリしてる。ダサい。目立たない、さえない大学生。

それが、今日の悠さんを見た私の印象だった。
初めて会ったあの日とは、まったく違う。

「あの、わかりましたか?」

受話口から、戸惑っている悠さんの声が聞こえて、電話が繋がったままだったことを思い出した。
あわてて携帯を持ち直す。

「あ、はい! コーヒーを注文してからそちらへ向かおうと思うんですけど、悠さんもコーヒーでいいですか?」

隣には、まだギャアギャア言っている社長。
社長を落ち着ける為にも、とりあえず、少し時間を稼ごうと思った。
幸いな事に、このカフェはオーダーをレジでするようになっている。

「あ。僕、落ち着かなかったので、先に注文してしまったんです・・・。すみません」

申し訳なさそうに悠さんが言った。

「いえ、私達が少し遅くなってしまったので。お待たせしてしまってすみません。では、注文したらすぐ席に向かいますね」
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