にせもの王子さま
社長は眉間に皺を寄せたまま、カウンターで２人分のコーヒーを注文してくれた。
出来上がりを待っている間に、ふと、この間悠さんに携帯で撮らせてもらった写真を社長に見せていなかった事に気付いた。
携帯を操作して、悠さんの写真を表示させる。

「あの、社長。信じてもらえないかもしれないんですけど、私がスカウトしたのはこの人なんです・・・」

恐る恐る社長に携帯を差し出した。
社長は腕を組んで顎をツンとあげ、携帯を見下ろした後、これでもかと目を見開く。

「ちょっと、アンタ・・・この写真があの子だっていうの？」

社長の反応は当然だ。
信じられないですよね。だって、私も信じられません・・・。

「全然別人じゃない！ どこがどうなって、あの状態なのよ？」

「わかりません・・・。でも本当に、私がスカウトしたのはこの人なんです・・・」

このままだと、面談が流れてしまうかもしれない。
私は必死に訴えた。
< 55 / 68 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop