憧れの彼と、イイ仲になりたいんです!
揶揄ってるの?それとも…
月曜日の朝、いつものように自分のデスクに座り、憧れの人が他の女子達と会話する姿を眺めていた。

営業二課のドアを開けて出社してきた坂巻さんは、早速先輩の一人に呼び止められ、「金曜日の夜は急にいなくなって何処に行ったの?」と訊かれていた。


「ああ、ごめん。急に腹が痛くなって籠ってたんだ」


トイレに…と言うと、悲鳴のような声が沸き上がる。
皆に「大丈夫だったの?」と心配されている人は、「まあ辛うじて」と笑って誤魔化しながら席に着いた。


私とは違う上座の席に座る彼。
その彼を見つめて溜息を吐き、(良かった…)と安堵した。


坂巻さんが私を追ってホテルを出たと言わなくて良かった。
話し下手な人間の相手をさせられて困ったんだと言われたらどうしようかと焦った。


ホッとしつつもこの空間でまた憧れの人を見つめるだけの日々が始まる。

土曜日も日曜日も散々ついた溜息をこぼしながら、それでも仕方ないんだ…と諦めていた。


この二日間、意気地のない自分を罵り、二度とないチャンスをものに出来なかったことを後悔して過ごした。

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