手をつなごう
「今日はありがとうございました。
あんな良いお家を紹介してもらって………。」

「気に入った?
オレに気を使わず、嫌なら断ってね。」

「そんな、本当に気に入りました。
お庭まであるなんて!!
私、お花が大好きだから……。
プランターなら置いても良いですかね?」

「もちろん、彩ちゃんお花が好きなんだ。」

ヨシ!良いこと聞いた。

クリスマスプレゼント………

若い女の子が、何を喜ぶか分からないから……

送って行きながら、リサーチしようって思ってたんだよ。

イブもクリスマスも出てくれるって言うし………

バイト代は上乗せするけど、ちょっとプレゼントもあると良いかなって…

花束だと持って帰るのが大変か??

まぁ~、店のオバチャンに相談してみよう。

「だったら……お家の件は、話を進めるね。
いつ引っ越しがしたい?」

「もし、早くても大丈夫なら………2月には入りたいです。
3月の半ばから最後の実習らしくて………
今年は、新人5人だからかなり大変ですって言われてるから……
それまでに、一人の生活に慣れておきたいなぁ~って思って。」

「ヘェ、新人5人!
それは大変だけど、活気があって良いかもね!」

先生という仕事は知らないけど…

子供たちは、ワクワクして楽しいだろうな。

オレの子供の頃だって、転校生や席替えってだけでも

何となく、非日常が嬉しかったもんなぁ~

「洋介さんの今の言葉………嬉しいです。」

…………………??……………今の言葉???

意味が分からず、面食らっていたら

「活気が出て良いって言ってもらえたことです。
先生達が沢山辞めるから、仕方ないですけど……
保護者も不安そうだし………
園もどこかピリピリして『少しでも覚えて、今ある形に近づけて!!』って
イライラオーラがスゴくて………。
新しい風が、新しいイメージを作っても良いって言ってもらえたみたいで……
嬉しかったです。
もちろん、今あるやり方をしっかり覚えて……
子供たちや保護者に安心を届けたいって思うけど……
同じ事をしても、違う人がすると……変わってきちゃうから。
全く一緒には……ならないと思うので………」

「幼稚園は、たまに子供が買いにくるのを構うか……
自分が行ってた頃の記憶だけだから、無責任に言っちゃったけど…
それで彩ちゃんが元気になったなら、良かったよ。
これからご近所さんになるなら……
別に毎回パンを買わなくても
試作品や売れ残りで良かったら用意して待ってるから………気軽に顔を見せてよ。」

「はい!!
私、お兄ちゃんが欲しかったから……
そう言ってもらえて、スゴく嬉しいです!!」

あぁ~オジサンって言われなくて良かったぁ~

家まで送って行くと、ご両親に挨拶され

住む家が見つかったことを、彩ちゃんが話したら………

「上がって下さい。」と言われて

……夕ごはんまでご馳走になった。

大勢で食べることなんて、殆ど経験のないオレには

衝撃的な光景だったけど……

これが日常だった彩ちゃんは…これから一人って………淋しいだろうな。

出来るだけ、誘ってホームシックにならないようにしないとな。
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