恋のコーチは期間限定
 私の結婚してますよね?の質問を鼻先で笑って花村さんは平然と言ってのけた。

「そうだけど、美希だってまだ俺のこと好きだろ?」

 暗に不倫しようって言いたいわけ?
 こんな最低な人だったなんて。

 花村さんは人の弱みを目ざとく見つける狡猾な性格の持ち主で、それもあってのし上がってきたのだろう。

 私を見つめ、あたかも心配するような口ぶりで言った。

「今の美希は不安そうな顔をしてる。
 幸せじゃないんだろ?
 あんな小僧に美希を幸せに出来るわけがない。」

 テーブルの向こうから伸ばした手は私の頬に触れ、その手は温かかった。

 花村さんに指摘された通りの不安な気持ちはその温もりに心が揺れた。
 温もりを感じたくて、そっと目を閉じた。



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