恋のコーチは期間限定
　蒼のアパートに行く途中で蒼が足を止めて
呟いた。

「母さん……父さんまで………。」

　視線の先には厳格そうなご夫婦が立っていた。
　蒼のご両親………。

　突然の対面に緊張していると挨拶をする間もなく罵られた。

「蒼葉！
　あなた全然連絡が取れないと思ったら………。
　こんな年上の女にたぶらかされて！」

　蒼は私を庇うように立って反論する。

「違う！逆だ！
　こんなに頑張れるのは美希さんのお陰だ。」

　目を見開いた蒼のお母さんは怒りに任せて暴言を重ねた。

「目を覚ましなさい！
　こんなどこの馬の骨とも分からないあばずれ女なんて！！」

　お会いしたことも、お話させてもらったこともないのに………。
　頭ごなしにひどい女だと決めつけられてショックで何も言い返せない。

　そんな私と対照的に蒼は怒りを露わにした。

「やめろ。美希さんのことを侮辱するのなら親であろう許さない。」

　低く強い口調で言った蒼にお母さんでさえたじろいで後退りした。

　しばらく沈黙が降りた後、蒼は静かに告げた。

「もう何も話すことはない。
　帰ってくれよ。」

　言葉を詰まらせたお母さんを一瞥して蒼は私の手を引いて歩き出した。
　私は気になりつつも、何も言えずに蒼の後に続いた。

　置き去りにされたご両親はお父さんがお母さんに何か言葉を掛けているようだった。






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