恋のコーチは期間限定
「………寝ちゃった?」

 伺うような声にハッとして顔を上げる。

「ごめん。ウトウトしてたかも。」

 蒼葉くんは両手にお皿を持って私を覗き込んでいた。

 人の家で寝ちゃうなんて、どれだけ気を許してるんだか……。
 気を許していい関係じゃないはずなのに。

 蒼葉くんといると調子狂うんだよね。
 最初からずっと。

「フッ。そっか。
 いいよ。疲れてるんだよ。
 食欲はある?」

「うん。ありがとう。大丈夫。」

 テーブルに並んだのは野菜炒めとお味噌汁。それに冷奴。
 男らしい料理に微笑んだ。

「美味しそう。」

「そう?良かった。
 食べよう。俺も腹ペコ。」

 蒼葉くんは私の隣に座った。
 ドキッとしたけれどその距離は前の心地いい、程よい距離。

「いただきます。」

 声を揃えて合掌した。

 豪快に大きな口で食べ始める蒼葉くんはそれでも品があって気持ちよく見ていられた。

「ん?美希さんは食べないの?」

「えぇ。頂くわ。」

 やっぱりこうしていると違う。
 大人ってわけではない。
 けれど子どもってわけでもない不思議な感じがした。

「美味しい!」

 口に入れた野菜炒めは絶妙な味付けでご飯が進む。
 私の隣で蒼葉くんは微笑んだ。

「良かった。口に合ったみたいで。」




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