大人の階段を駆けあがる
「一緒に学校に行こうよ。この間も他校の男子に声をかけられてたし、危ない人も多いから心配で……」
「いや、アンタも十分危ない人だから」
「ま、待ってよ。すずめちゃ……」
「うざいから付いてくるな!!」
私は田崎から離れるようにスタスタと歩く足を速めた。
可愛いは正義。だから私がすること、言うことは絶対であり、今まで後悔というものをしたことがない。
……けれど、田崎琉生斗をあの時に助けたことは失敗だったと思ってる。
田崎はいわゆるいじめられっ子だ。
同級生や上級生。時には年下からもからかわれてはバカにされていた。
田崎とは違うクラスだけど、廊下でじゃれ合いを越えたことをされていることは知っている。
いじめなんて珍しいことでもないし、私には関係ないと素通りしていたけど、ある日の下校途中。
『ほら、服脱げよ。お前が本当に男かどうか確かめてやるから』
そう言って田崎を取り囲んでいたのは、同級生の男子たちだった。
どうやらスマホで写メや動画を撮ってSNSに上げるつもりらしい。
田崎は亀みたいに身体を丸めるだけで抵抗はしない。そんな田崎に男子たちの行動はエスカレートしていき、最終的には笑いながら蹴ったり殴ったりしはじめた。
ニマニマと緩い口元。なにがそんなに楽しいんだろう。
よっぽど暇をもて余しているのか。
それとも殴ることで自分が強いことを見せ付けたいのか。
まあ、別にどっちでもいい。
ただ一言、言わせてもらうなら――。
『ダサ』
小さく呟いた声は高笑いをしていた男子たちにも聞こえたようで、視線が田崎ではなく私へと向いた。