すべては、
日常
「あなた、そろそろ出ないと会社遅れるわよ。」


食器を洗い終わりリビングを見れば、まだ旦那は朝食をとっていた場所から一歩も動いてはいなかった。


会社に行く前に新聞を読むのがあの人の習慣なのだけれど、読み出すと時間を忘れて熱中してしまうから私がいつも家を出る時間に声を掛けるのが習慣になっていた。



「ああ、このページ読んだら出るよ。」


「何か面白い記事でもあった?」


「ん…そうだな…」



旦那は返事を返してくれるが、面倒なのかこれ以上新聞を読むのを邪魔されたくないからなのか、新聞から一度も顔を上げない。



「オレオレ詐欺で一千万騙し取られたとか、隣町で殺人事件があったとか、おとり捜査の本格的導入とか?」


「全く面白くないんですけど…」



私が詐欺嫌いなの知ってるよね?
隣町で殺人事件とか…かなり恐いし。
おとり捜査とか、ドラマや映画だけの話かと思ってた。


ふと壁にかけてある時計を見れば、こんなにゆっくり話している時間ではなくなっていた。


「もう!会社遅れるから!」



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