すべては、
忍び寄る影
「大きい家ですねー、建てられたばかりなんですよね?」

「ああ、去年な。建てたはいいがローン地獄だよ。」


「それでも自分の家を持つって男の夢じゃないですか。凄いですよー」



旦那が連れてきたのは、20代後半くらいの若いこだった。
若いと言っても私よりは年上だけれど。


「木下さん、料理お口に合いますか?」


「美味しいです奥さんの料理!本当毎日食べたいくらいですよ!」


にこにこと子供のように無邪気に笑う子だな、というのが最初の印象だった。


「ふふっ、お口にあって良かったです。」



女の子達が好きそうなアイドルみたいな甘いマスクに、ダークブラウンの髪。
身長も180近くありそうで、会社じゃあ絶対モテているに違いない。

それに比べて旦那は…

ここと比べるのはどうかと思うけど。

木下さんの向かいに座る旦那を見れば、ビールをグビグビ飲んでは豪快に笑っている。

旦那は今年で三十八で、それなりに年を刻んできた顔ではあるが整った顔立ちで、人当たりは良いし、学生時代は結構モテモテだったらしい。

本人の証言だから本当にモテモテだったかは分からないけれど、"モテ"ぐらいはあったとは思う。



「あっ、これ結婚式の写真ですか!?」


< 3 / 60 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop