ねぇ、泣かないでよ。
冷たい風




「陽、昨日さ、」





次の日の朝。いつもより早くに来たはずなのに、颯汰くんは下駄の前に立っていた。





「邪魔」





冷たい事しか言えない私は、いつもよりか胸が締め付けられていた。






「、、、俺、何かした?」


「何かって?」


「ずっと待ってたんだけどさ。」


「へー、待ってたんだ」


「陽の、友達が帰ったって教えてくれて。その、」


「何?何が言いたいわけ?」


「、、、そんなに。俺と帰るの嫌だった?」







なんで。

昨日の女の子は誰なの?

彼女いるのに好きとか言ったの?

今までの言動はただの幼馴染として?





女々しい疑問ばかり浮かんで、話せない。

関係ないのに気になってしまう。彼女でも、何でもないのに…









「ねぇ、泣かないでよ」





あぁ。私、颯汰くんにかまって欲しいんだ。

だから、泣いちゃうんだよ。









「俺、しつこ過ぎたよね。気をつける」








優しすぎる彼の言葉に、素直になれない。






「もう、話しかけてこないで」





冷たい言葉で、泣きやもうとした。

でも、





「わかった。」




そう笑って去る颯汰くんの姿が痛かった。

すごく、すごく。胸に刺さって痛かった。






冷たい風が開いたドアから流れる。

なのに、涙は乾かなくて、熱かった。




声を殺して胸を叩いてみたけど、

何も変わらなかった。






「こわっ、、ぃよ。」





あの頃のように、怖がって泣いてみた。

でも、誰もいないまま。変わらず風だけが冷たく吹いていた。

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