ねぇ、泣かないでよ。

苦手な男





カランカランっと可愛らしい音が鳴る。

愛美の言っていた新しいカフェ。



「いらっしゃいませぇっ」



可愛い制服に可愛い女の子。接客も愛らしい。

案内された席は窓側の落ち着いた所だった。
雰囲気的にはくつろげる好きな感じだ。



「陽!みて!これ、すごい!」



メニューの特大ティラミスを指さしはしゃぐ愛美。




「それ、食べよ!」

「さすがっ陽!」




すいませーん。と大きく手を挙げた愛美。

それに、はーい。と爽やかに来た、、、






「え」

「あ」



黒いシャツに茶色のエプロン。胸の名札には、『souta』と書かれていた。



「ツッキーじゃん」

「あ、えっと。愛美ちゃん」

「そう!覚えててくれたんだぁ」

「ん。陽の友達だし」

「そりゃ、有難い」



うっ、、。

まただ。颯汰くんとすれ違う度に締め付けれる心臓。今回は、苦しすぎる。


逃げることもできない。




「注文、どれにしますか」

「じゃあ、これ!」



愛美と普通に話す颯汰くん。
なんだ、変なのは私か。こんなにも苦しいのは、私だけなのか。

泣くのも、私だけなのか。




「陽?、、陽?!どうしたの!」

「うぅ、、」



まだ、颯汰くんもいるのに。
なんだか泣きそうな感覚がして、眉間しわを寄せ、我慢する。

それを愛美は察したように呆れる。




「なに!、、もしかして。いや、まじ?」

「っう、、」

「泣くな!我慢してよ」

「ごのぉ、」

「ん、この、なに?」

「ごっ、、この、ティラミス。早ぐ。食べたい」




自分がこんなにも弱かったんだって、余計に辛い。





「っあははっ。急いで、お持ちします」

「ごめんね、ツッキー」

「陽のためなら」



颯汰くんの笑顔が胸に刺さる。
そして、優しい懐かしい言葉に我慢の線が緩みそうになる。



「ツッキー。そんな事言っちゃダメでしょ」

「、、、ダメ?か。」

「ん。だって、彼女いんのに。そりゃ、ったりめーよ?」



愛美がスパッと彼女というワードを出す。



「彼女?、、え!俺、彼女いんの?!」

「いや、それ聞きたいのウチらですけど」

「、、、和か」



自分が彼女いることに驚いている颯汰くん。”和”と言う言葉にも反応してしまった。




「陽、俺。彼女なんかいないから」

「へ」

「周りが何言おうと、俺は」



「ソウちゃーん」



颯汰くんの声に被さる可愛らしい猫声。



「ソウちゃん、お友達?」

「美咲」


みさき。と呼ばれる女の子。
颯汰くんの腕にベッタリと張り付いて見せつけられているようだ。




「あんま、水草くってると、怒られるよ?」

「わーってるよ。接客してこい」

「はぁい。」



ガラッと興味無さそうに他のお客さんの所に行く女の子。



「ツッキー、今の彼女?」

「はっ、美咲が?なわけ」

「だって。、、完全に彼女の嫉妬じゃん」

「あれは」



もう、ちょっと無理ぽい。



「ティラミス遅いから、帰る」

「ちょ、陽?」

「愛美は待っててもいいと思う。」

「は?」

「、、、ごめん、帰る。」




これって、私が変なのかな。

これくらい、普通の子なら当たり前なのかな。




男の人って、苦手だな。

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