ねぇ、泣かないでよ。
お母さん
【水島 陽】




変な、夢をみた。

小学3年生の颯汰くんが泣いてる私の頭を撫でていた。


『陽、泣かないで』

『僕は、陽の傍にずっといるよ』



でも私は今の姿でボロボロだった。





「陽ちゃん。」



自然と目が覚めた。



「ねぇ、なんで泣いてるの。お母さん」




私の頭を撫でながら、薄暗い部屋の中でお母さんが泣いてた。



「陽ちゃん。お父さんのこと。嘘なの」

「ん。だと思った」

「あの人ね。再婚してた」

「そ、、、か。」

「ごめんね」

「いいよ。もう」



懐かしい柔らかい香りが上に被さる。




「お母さん、いい匂い」

「ん。でしょ。お父さんがくれた最初で最後の誕生日プレゼントの香水なの」

「そう、なんだ」

「ダメなお母さんでごめんね」

「もう、十分」

「今日、一緒に寝ていい?」

「ふふ、ん。いいよ」




何年ぶりだろうか。
こんなにも母親の温かさが伝わってくるのは。


母親が泣きながら謝ったのは

父親と離婚して立ち直ってからだ。




多分、母親は立ち直ってなかった。けど無理して笑って




『ごめんね』



それから泣かないように決めたのに。

結局、弱いせいで泣いてしまう。






泣いてもいいことないのに。
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