アダム・グレイルが死んだ朝

髪に触れる手を振り払おうとした私の耳元に、林さんは強引に唇を寄せると、その唇をまた楽しそうに歪めた。

「“俺のだけどいい?”って君の兄は言ったんだ」

眩暈がした。澪はここに居ないのに、すぐそこに居る気がした。怖いほどに、胸がざわめく。

「だからますます興味が沸いた」

「……意味わかんない」

「本当に、俺も長く友人をやっているけれど、君の兄のことは理解出来ないよ。自分が惚れている女を俺に紹介するんだから、お人好しって言うか異常だよね」

「惚れているって、そもそも私たちは兄妹ですよ?」

口の中が乾いていく。さっきまでの嫌味が今は一つも出てこない。本当に最悪だ。

「でも、血は繋がっていない」

全てが嫌になる。

「それも澪から聞いたの?」

澪とよく似た男。私を気に入ったらしい男。

「ああ、そうだね。“血が繋がっていないから俺のだよ”って言われた。”それでも良ければ、充希にあげる”ってね。それって、どういう意味だと思う?」

澪は異常だ。普通じゃない。
だけどそんな澪の考えを、わかってしまう私も普通ではないだろう。

「……さあ。私には、どうでもいいことです」

< 19 / 19 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:3

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

君の罠 【改訂版】

総文字数/2,137

恋愛(学園)4ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
ハル君が私を好きになる確率は きっと地球がひっくり返ったとしても ずっとずっとゼロのままだ 『君の罠』 絶対に無理な恋なのに どうしてこんなにも 君に夢中なのだろう
白馬の悪魔さま 【完】番外編追加

総文字数/80,137

恋愛(ラブコメ)186ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
「女の子は綺麗にしていないと」 「どうして?」 「王子さまに見つけてもらうためよ」 「王子さま?」 「そう。白馬に乗った王子さまにね」 家崎芙美 27歳【独身】 趣味は仕事と女磨き 付き合った男は数知れず だけどまだ 王子さまは現れない 「それって俺のこと?」 現れたのは、白馬に乗った悪魔さま!? 『白馬の悪魔さま』/卯花かなり ※本編完結。コンテストエントリー中のため、番外編の更新は暫く休止します。
人魚のいた朝に

総文字数/43,161

恋愛(純愛)61ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
これはハッピーエンドではない 『人魚のいた朝に』 誰にだって戻りたい朝がある。 2018/07/19 完結

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop