君が眠る時には

決意


次の日、私は葵に会いにいかなかった。


スマホにはなぜか遥さんからの着信とメッセージがきた。


無視しよ。


別に不思議な事じゃない。


出会ったばかりの人にあんなに感情的になるなんて、私はどうかしていたんだ。


前の生活に戻ろう。


そう思って町に繰り出した。


それなのに今日は誰からも声をかけてもらえない。


やけになって、初めて自分から声をかけに行った。


中年で小太りで指輪をしてない人。


あ、あの人でいいや。


「あのー、お兄さん」


「はい」


「今暇ですか?」


「暇だけど、どうしたの?」


あー、鈍い人か。


「ちょっと遊びに行きませんかぁ〜?」


この時間に私服でここにいるってことは、どうせ暇でしょ。


一瞬お金を持ってるか心配になったけど、パーカーのポケットからは少し古そうな財布が見えた。


「いいよ」


少しの沈黙の後、理解したかのようにそう答えてくれた。

< 40 / 187 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop